tender dragon Ⅱ


「うそっ、こっちに来るよ!」

悲鳴にも似た女の子たちの声。

"こっちに来る"って言った?


「逃がしませんよ、美波さん。」


しっかりと捕まれた腕。目の前には無邪気な笑顔であたしを見つめる春斗がいた。


「あ…」

「バレバレですよ」

メールで言っていた通り、腕のギプスも足のギプスもない。春斗はしっかりと1人で立っていた。


「行きますよ。」

「えっ、どこに!」

春斗の手はあたしの手をガッチリ掴んで離さない。恋人繋ぎなんて、甘ったるい空気はなかった。

「大丈夫ですよ。心配しなくても、安田さんの家には行きませんから」

あたしよりも遥かに大人っぽく、優しく微笑んだ。まるであたしを安心させるかのように。


「じゃあどこに…」

「2人きりになれる場所に行きましょう。」

「え?」

春斗の考えてることが全く分からない。あたしをつれてどこへ行くつもり?


周りにいた女の子たちは羨ましそうにあたしたち2人を見てこそこそ何か言ってる。

勘違いされたって仕方ないよね。だって今あたしたち恋人繋ぎってやつをしてるんだから。