「うそっ、こっちに来るよ!」
悲鳴にも似た女の子たちの声。
"こっちに来る"って言った?
「逃がしませんよ、美波さん。」
しっかりと捕まれた腕。目の前には無邪気な笑顔であたしを見つめる春斗がいた。
「あ…」
「バレバレですよ」
メールで言っていた通り、腕のギプスも足のギプスもない。春斗はしっかりと1人で立っていた。
「行きますよ。」
「えっ、どこに!」
春斗の手はあたしの手をガッチリ掴んで離さない。恋人繋ぎなんて、甘ったるい空気はなかった。
「大丈夫ですよ。心配しなくても、安田さんの家には行きませんから」
あたしよりも遥かに大人っぽく、優しく微笑んだ。まるであたしを安心させるかのように。
「じゃあどこに…」
「2人きりになれる場所に行きましょう。」
「え?」
春斗の考えてることが全く分からない。あたしをつれてどこへ行くつもり?
周りにいた女の子たちは羨ましそうにあたしたち2人を見てこそこそ何か言ってる。
勘違いされたって仕方ないよね。だって今あたしたち恋人繋ぎってやつをしてるんだから。



