綺樹は表情を緩めた。
「まあ、ざっくり割ると4分の1だからね」
「4分の1?」
「祖父はスペイン人だが、祖母はフランス人だ。
母は金髪碧眼だった」
「ああ、なるほど」
だからこんなに栗毛なのか。
「なるほどって。
話したことあるだろう」
「ない。
初耳だ」
「驚いたな。
結構、長く一緒に過ごしているから、色々しゃべった積りなんだけど」
「おれたちは、いつだって肝心な事は話していないからな」
綺樹は静かな微笑を漂わせた。
「ああ、そうだな。
いつだって話さないな」
そして二人とも黙り込んだ。
さわさわと木々の葉が音を立てている。
遥か下からの喧騒が潮騒のようだ。

