だが、涼の主な仕事場であるキッチンはモダンな感じだった。

バルコニーへ出られるガラス戸やガラス天井から光が燦々と差込み、明るく、居心地が良かった。

床には黒と白の大きいタイルが市松模様に敷き詰められ、キッチン台やコンロは
ステンレスだったが、部屋の中央の大きな作業台は古い木でできていた。

磨くには手間だったが、廃材を使ったように味わいが深く、涼は好きだった。

キッチンには6畳を優に超すパントリーもついていた。

その奥にはワインセラーもあり、初めて見た時、既に何本もワインが並んでいた。


「全く、あいつは」


思わず呟いた。

酒の用意だけはちゃんとする。

微苦笑して、今日もまた夕食の準備にかかる。

初日はおかゆを一口しか食べられないのに、みぞおちが冷たくなった。

こんな状態までとは思っていなかった。

それなのに毎晩、日付が変わる頃に帰ってくる。

どこにそんな体力があるのだろう。