Storm -ただ "あなた" のもとへ-



「婚前協定書が出来た」


動きが止まった。


「ああ、そう」


涼はダイニングテーブルにばさりと置く。


「サインしろ」

「わかった。
 置いておいて」

「今しろよ」


ペリエの壜のふたを閉めながら、驚いてやや目を見開き見上げる。

綺樹は何かいいたそうに口を開いたが、涼の顔を見て閉じた。

以前の綺樹だったら眉を逆立て、一つ怒りを爆発させて出て行っていただろう。

仕事で成長したのだろうか。

今の綺樹はため息をついて椅子に座った。

疲れて帰ってきてすぐさま、家でも仕事のようなものを見たくない気持ちは良くわかる。

でも譲らなかった。

綺樹は肘を突いて頭を支えながらページをめくっていく。

途中からおかしそうな顔になってきた。