「おまえが後数年でいなくなるって?
おまえの元に戻る決心は既に出来ていた。
その手段を探していた時だったからな。
成介がやってきて、運がよかったよ」
「おまえは、運だけはいつもいいものな」
綺樹と涼は視線を絡ませて静かに言った。
「後に一人残された者の苦しみは長いよ。
おまえもそれがわかっている。
だから俺を腸チフスから助けたんだろ」
「人を。
勝手に殺すな」
綺樹は皿を押しやった。
それが食事終了の合図だと知っていた涼は、綺樹の残りを食べ始めた。
「後数年ではないかもしれないじゃないか。
すごーく長生きするかもしれない」
綺樹の冗談の口調に涼も応じた。
「ああ、そうだな。
俺よりも長生きしてくれ」
何気ない言葉は綺樹の心に沁みた。

