綺樹の前にあった皿をとると、新しいオムライスの方の皿を置いた。
「こっちを食えよ。
温かいから」
綺樹は口をつぐんで、しばらくオムライスから湯気が上がるのを見ていた。
「あれ程、あの世界は合っていたじゃないか。
おまえらしかった。
自由気ままで」
涼は新聞をめくった。
「そうだな。
いい暮らしだったよ」
「だったら、なんで捨てたんだ?」
綺樹は新しいオムライスにスプーンをつきたてた。
「おまえともう会えないと、覚悟してあの世界に移ったというのに、こっちの気持ちはお構いなしに、全くもって気紛れに会いに来た。
そして突然雇用関係になって、解消だ。
夫婦関係から恋人関係、雇用関係とくればフェードアウトとしては上手い。
ただこっちは、それでも気持ちの整理がつかなかっただけだ。
だからなんらかの決着をつけたいんだ。
別れるなら、残酷に切り刻んでもらうぐらいが丁度いい。
得意だろ?」
涼がにやっと笑った。
綺樹はため息をついた。
「そうして欲しいのか?」
「まさか」
しばらく二人は無言でスプーンを口に運んでいた。

