綺樹がスプーンを止めて涼の視線を受け止める。
「ひどい顔をしていた」
それが気になって眠れなくなった。
綺樹は涼がくしゃりと笑う顔が大好きで、でも以前、西園寺を継いでしまっ
たら無くなった。
だからその笑顔が見られたのにほっとした。
「まだミスるほどのレベルじゃないよ」
「そうか」
野菜のみじん切りを再開する。
「じゃあ、どうしたの?」
涼は手を止めたが、また包丁を動かす。
「いつの間にか、随分と時間が経ってしまっていたんだな、と思っただけさ」
綺樹スプーンを持ったまま両肘をついた。
「そうか」
本当のことを言っていない気がする。

