Storm -ただ "あなた" のもとへ-


首の線といい、体の線といい。

もう幼さが無く、しなやかに変わっていた。

涼は綺樹の前髪をのけた手を握り締めた。

自分と結婚していた時と一つ時代が変わっている。

もはやかつて自分とのものは何一つ残っていない。

いつのまにか自分とかつての関わりがあった綺樹が消えていた。

消して、更に今の所有を示すように体に印をつけた男。

涼は自分の呼吸音を聞いていた。

落ち着け。

同じ事をしたって意味が無い。

一種の殺気立った空気を察したのか、不意に空気が動いて綺樹が目を開けた。

急激に焦点が合ってくる。


「ただいま、じゃない。
 おかえり」


片腕を支えに上体を少し起こした。


「日本語の日常会話は久しぶりで、わからなくなる」


寝ぼけているのを払おうと軽く頭を振った。