シャワーを浴びて、さっぱりした外見になると、卵をゆでてパンを焼く。
玄関で物音がしたのにキッチンを出た。
ちょうど廊下を歩いてきた綺樹と目が合った。
リビングから廊下に差し込む光が綺樹を斜めに照らしている。
綺樹が足を止めた。
涼は綺樹の全身をただ見つめていた。
「おかえり」
涼は微笑した。
綺樹はその柔らかい微笑が不思議だったらしく、まだ探るような目をしたま
ま首を少し傾げた。
「ただいま」
涼は綺樹を引き寄せて耳に頬をつけた。
離れられない。
他の男に渡せない。
そして綺樹がいなくなった世界で、長く命が尽きるまで生きていくことは耐えられない。
だからこの世界に戻ってきた。
それを忘れてはいけない。

