涼はグラスを空けた。
酔いを醒ますことを兼ねて、気持ちの整理をしようと夜の街を歩き回った。
酔ったままで帰れば、綺樹を押し倒す。
気持ちが落ちつかなければ、感情のまま綺樹を傷つける言葉を発するだろう。
自分に対しての腹立ちと不甲斐なさの、八つ当たりとして。
空が白んでくると、アパルトマンに戻り玄関のドアを開ける。
部屋の中は長く人がいなかったように、冷え冷えとした空気だった。
寝室もバスルームにも綺樹の姿は無かった。
急いでウォーキングクローゼットを見る。
綺樹の服がいつもどおり並んでいるのに、力が抜けてドアに思わず寄りかかった。
携帯を取り出した。
「綺樹?」
「ああ」
電話がかかってきたことに少々驚いているような口調だ。

