Storm -ただ "あなた" のもとへ-


涼の顔から表情が消えた。

同時に涼は綺樹が怒っていることも気が付いた。


「誠実は、鋭い槍だ。
 いつでも誠実でいることが、いい訳じゃない」


それだけ言うと涼はグラスを置いた。


「酔いを醒ましてくる」


部屋を出て行く音を綺樹は背中で聞いていた。

しばらくして玄関のドアが閉まる音に、やっと肩の力を抜いた。

やってしまった。

いつものことながら馬鹿だと思う。

涼のいう通りだ。

何もかもさらけ出す必要は無いのに。

終わりだな。

誇り高い涼は許せまい。

縋りに行くか?

綺樹は苦く笑った。

異性が絡んで壊れた男女関係は元には戻らない。

時計を見ると3時半を回った頃だ。

もう眠れない。

仕事をするか。

没頭できる仕事が出来てよかったよ。

口元を歪めてから綺樹は職場に向かうため立ち上がった。