綺樹は冷静に涼を眺めた。
「そうだな」
だからいつでも及び腰なのかもな。
「ただ相手に対して誠実でいたいと思っている。
だからおまえが携帯で帰って来いといった時も帰ってきた。
フェリックスにも私が望むままに相手をするのに、結婚をしたいと思わないのかと何回か聞いていた。
あいつにとっては立場上とてもいい話だから。
結婚しなくても、子どもを産ませてしまえばいい。
そうすれば地位は安泰だ。
ただあいつはそうはしなかった。
理由を聞いたが今もってよくわからない」
涼がまたグラスを空けた。
「全く、聞きたくない話だな」
引き攣るように笑っている。
「ずっと邪推するよりも、知っておいたほうが楽だろう?」
麻美子のことを思い出したせいで、悪い癖とわかりつつ、涼に対して残酷な気持ちで突き進んでいた。
「おまえよりもフェリックスと寝た回数が多いとか」

