「私はフェリックスとの関係を、おまえとの結婚とは重ねていない」
綺樹は腕を組んで、涼を睨みあげた。
「大体、おまえのほうがよっぽど節操が無いし、信用が無い。
あの愛人の数はなんだ?」
どんどんと二人の間に溝が広がっていくのに、涼はもう一杯飲まずにはいられなかった。
綺樹は涼がグラスを空けるのを横目で見ていた。
「私は基本、誰かと付き合っている時は、重ねない。
確かに絶対じゃない。
ただその時は関係が終わるかもしれないと、今回みたいに覚悟して踏み込んでいる」
「勝手に覚悟するなよ」
涼が語気鋭く言った。
「おまえの方には覚悟があるかもしれない。
だがこっちにはいつも突然だ。
いつでも、だ」
恋人関係の時に起こった誘拐。
なんとか会いに行けば、言われた言葉は、関係を簡単に清算する言葉だった。

