Storm -ただ "あなた" のもとへ-


涼は少しだけ注いでやった。


「どうしたの?」

「いや」


涼は綺樹から離れた。


「なぜ、結婚を急ぐんだ?」


静かな問いかけだった。

グラスを揺らして琥珀色の液体の動きを見つめている。


「なぜ、おまえはしたくないんだ?」

「したくない?」


綺樹は驚いたようだった。

涼は口をつぐむ。

下手するとフェリックスへの想いに気づきそうなことを、言ってしまいそうだった。

綺樹は首を傾げた。


「おまえにしては早急に運ぶなと思って。
 どうして?」


綺樹の瞳が油断なく光っている。

それか。

涼は笑い出した。