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さやかは出勤するといつもどおり綺樹の部屋の前を通り過ぎて、立ち止まった。
きびすをかえす。
「おはよう」
綺樹は顔を上げた。
今度は何だと言いたげだ。
「おはよう」
「凄い顔色ね」
「そうか?」
「少しそこで横になりなさい」
綺樹はしばし考え込んだ。
「うん、じゃあ少しだけ」
大人しく従うのはよっぽど気分が悪いのだろう。
綺樹が立ち上がってデスクを回ってくる。
足がふらついた。
ぐっと胸に差し込むような痛みに、綺樹は顔をしかめて胸を押さえた。
とたんに目が回る。
どちらが床かわからなくなり、体に鈍痛がした。

