「何があっても戻って来いって言ったろ。
たとえおまえ自身が戻れないと思ったって。
色々なことがあるだろうなって思っていたさ。
それなりの覚悟はしている」
綺樹は息を詰めて、瞬きせずに涼の顔を見つめていた。
涼は置いていたタオルを手に取った。
「全く。
今頃泣くなよ。
昨晩、玄関に入ってきた時に泣けばいいだろ」
そういう女の狡さを学んでくれたら、こっちももっと楽なのに。
弱い癖にどうして強がるのか。
「何、訳わからないことを言うんだよ。
止まらない」
綺樹は自分の指で涙を払い続ける。
涼はタオルを渡すと痛がるのでそっと腕の中に入れた。

