涼は苦笑し、皮をむいたグレープフルーツを盛った器をテーブルに置いた。
「今日は早めに帰ってこいよ。
少しでも早く体を休めた方がいい」
意味をとりかねて綺樹は涼を見上げた。
涼は視線を受け止めた。
「なんだ?」
「いや」
綺樹は視線を外して、グレープフルーツをフォークで刺して口に入れる。
「フェリックスが」
二つ目を刺したが、口に運ばなかった。
「私たちの婚姻同意書を一族から集めていた。
あの誇り高い男が体まで使ってだ」
フォークを器の中でぐるぐると回転させる。
グレープフルーツが崩れていく。
それを綺樹は見つめていた。
「案の定、プライドはずたずたになっていた。
何かに怒り狂って。
半ば・・壊れかけていた」
フォークを手から離すと、ガラスの器にぶつかって涼やかな音を響かせた。

