それで涼は完全に怒りの表情に摩り替わった。
「なぜ寝た」
綺樹は涼の目を見た。
「寝たかったから」
言うと思った。
涼は横を向いて、はっと笑い声を出した。
「結婚を申し込んだ相手と住んでいながら、寝たかったから寝た。
おまえはそこまで節操無いのか」
綺樹はじっと涼を見つめていた。
その探るような目に涼の方がとまどった。
「ああ」
涼はくちびるを引き結んだ。
「最悪だな」
綺樹は顔をそらせると玄関ドアから離れた。
「荷物をまとめるよ」
涼の横を通り過ぎようとした。
「ちょっと待てよ」
涼はその腕をとった。
少し後ろに引き上げられる。
悲鳴が上がった。

