綺樹は書類から目を上げて宙をみつめる。
「ああ、どうしたの?
どうしても早急に私が見るべき書類があるなら送ってくれ」
いつもどおり変わらなく言うと、またフェリックスが一瞬押し黙った。
「わかった」
ため息をつく音がする。
「綺樹。
大丈夫か?」
ああいうことをしていて、なにがだよ。
言い返しそうになる。
体の奥底の痛みがひどくなる。
「おまえは?」
椅子を回転させ窓の方を向いた。
「なにがだ?」
ふてぶてしいその口調に綺樹は笑った。
「私は大丈夫だよ」
「そうか」
フェリックスらしくない、ためらいが伝わってきた。

