Storm -ただ "あなた" のもとへ-

 
  *

湿気の含んだ生ぬるい風が吹き荒れていた。

フェリックスは夜の闇の中、バルコニーにいた。

樹の枝がもがき苦しむ腕のような動きを見せる。

素肌にまとった黒いローブの裾が、たびたび翼のように舞い上がった。

漆黒の翼。

このまま自由になり、飛びたてられれば、どんなに楽か。

だが所詮、行き先は知れている。

薄く笑った。

背後のベッドの上で、綺樹はこん睡状態だった。

半分とはいえ、綺樹の骨格は華奢な東洋人だ。

自分の手荒さに、壊れそうになる。

そして壊れてしまえと思う。

そう。

壊してしまえばいい。

去れないように。

行き先が、そして帰り着く所がわからなくなるように。

ベッドに近づき、見下ろす。

切れたらしく、綺樹の太腿からシーツが赤く染まっていた。

フェリックスは手を伸ばし、指を頬から髪に滑らせた。

綺樹。

その方がおまえは幸せになれるかもしれない・・。