ドアが閉まる音に、綺樹はふと目を覚ました。
冷たい石の床に横たわったままだった。
痛む体を少し動かした。
身を起こすと頭ががんがんと痛んだ。
フェリックスはどこだ?
正面ドアが閉まった後、そのままここで押し倒された。
いつも以上に乱暴だった。
正直、殺されるかと思った。
痛いところを見ると、何箇所かに石で擦り傷が出来て血が滲んでいた。
バスルームはどこだ。
歩くのも大儀だった。
何も考えないようにしないと。
ぼんやりとそう思った。
でも考えてしまう。
何があっても戻って来いって言われたけど。
やっぱり戻れないな。
涼の性格を考えると、許すまい。
激怒し、憎悪し、切り捨てるだろう。
色々あると思っていたし。
あの二日さえあればと思っていたし。
笑うしかない。
綺樹は微笑した。

