Storm -ただ "あなた" のもとへ-


「フィー」


思わず愛称で呼んでしまった。

それが引き金になって、一度は飼い殺したと思っていた獣が飛び出した。

襟元からシャツの裾から手が入り、顎の線に噛み付かれる。

なぜこんな展開になるのか。


「おまえと寝たい」


奇妙にひしゃげた声だった。

抗っていた綺樹の動きが止まった。

やっぱりそうだよな、上手くいくはずが無い。

口元に嘲笑が浮かんだ。

目を閉じて体の力を抜く。


「いいよ」


いつものように軽くさらっと言った。

フェリックスの首に腕を回して瞳を覗き込み、口元で笑った。


「ここでするか?」


綺樹の挑発的態度に、フェリックスは微かに苦い表情をした。


「いや、場所を変える」


綺樹を膝の上からおろすと、金庫からカギを取り出した。