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そろそろスペインに行こうとしているときに、さやかから呼び出しがかかった。
部屋に入ると無言でソファーに座る。
さやかはその様子をデスクから見ていた。
「私が今回は賛成していないって聞いているわよね」
綺樹はため息をついて、足を伸ばし、あごを襟元にうずめた。
「そうだってね」
「でも縒りを戻したんでしょ」
「一体、何の縒りだろうね」
綺樹は息を吐きながら自嘲した。
「フェリックスも何を考えているのかしらね。
なぜ、あなたとかなり親密になったというのに、涼をわざわざ呼び戻したのかしら」
綺樹はちらりとさやかを上目遣いで見た。
やはりこの上司は何もかもお見通しだ。
「さあ、ね。
でも健康管理人にしたいらしいよ」
「一族から婚姻の同意をとるのに苦労しているわよ」
上目遣いでさやかを見たまま止まる。

