Storm -ただ "あなた" のもとへ-


   *

涼が食事を作って待っているものだから、そう遅くまで仕事が出来なくなった。

グレースにノートPCを用意してもらい、早めに家に帰ると夕食の後に仕事をするしかなかった。

今夜も綺樹はダイニングテーブルで仕事をしていた。

椅子に胡坐をかいて座り、パソコンと書類を睨んでいる。

バスルームから戻ってきた涼は、ドアのところからその姿をしばらく見つめていた。

学生が論文を書いているような様子なのに、実際は億の金の話だ。


「綺樹」


パソコンから目が離れない。


「綺樹」


もう一度強く呼ぶと、やっと気が付いたようだった。

まだ頭は仕事のほうに残っているらしく、ぼんやりとした顔だった。


「ああ」


何やら呟くと書類に視線が戻って、走り書きをした。

今は駄目そうだ。