「ずっと、私と距離を置いていたじゃないか。
なぜ、今をもって婚姻関係なんだ」
なじるなどという感じではなく、ただ素直に疑問のようだった。
腕の中の綺樹の暖かさに、本当に手放したくなかった。
「絶対に失いたくないものが、実はあっけなく、永遠に失われるのだと気が付いただけ。
だから離れたくない。
それだけだ」
綺樹はしばらくじっとしていたが、そっと涼を押した。
「もう、遅いと思うよ」
綺樹は息を吐いてズボンのポケットに片手を入れ、もう片手を少し振り、窓に寄ってしまった。
「婚姻関係はとても重い関係だ。
私はおまえにそこまで気持ちを向かわせて、築けないと思う。
それに今の状況でウルゴイティは結婚を許さないよ。
たぶん、だから、フェリックスはお前に情報を流したんだ。
私の健康管理人としては適切だから。
でも」
少し首をかしげて窓の外を眺める。
「なぜ同じことの繰り返しだと思わなかったのだろうか。
私はもたない。
その時はウルゴイティもダメージは大きいのに」
呟くようにして考え込む。

