「走ってきたの?」
「ああ」
自分が距離感を置くようになって、綺樹のややぶっとんだ天真爛漫さを見なくなった。
出会った頃、振り回されながらも、彼女のそんな性格の部分が好きだった。
だから、長く寂しかった。
涼は綺樹に近寄って、最後は自分の方に引き寄せて抱きしめた。
シャワーを浴びていないからだろう、綺樹から自分の使っているコロンの匂いが鼻をかすめた。
昔、綺樹が置き逃げしたプレゼント。
覚えているだろうか。
髪に顔を埋める。
「結婚してくれないか?」
綺樹の呼吸が一瞬乱れるのを体で聞いていた。
「なぜ?
なぜそんなことを言い出すんだ?」
身じろぎをしたが涼は腕を緩めなかった。

