Yesという返答に、オートロックの機械で眼球照合をして暗証番号を押した。
開いたドアの先でエレベーターが待っていた。
綺樹が変更も、涼の情報の削除もしていないことは確信があった。
そういうことは、ずぼらなのだから。
教会のような馬鹿でかい鉄製の玄関扉を押し開く。
包まれる重い空気の沈黙。
「綺樹!」
涼は大声で呼んだ。
来客用のリビングか、バルコニーか。
駆け足で長い廊下を通ると、書斎のドアが開いていた。
「綺樹」
金庫の前に立っていた綺樹が顔を向けた。
カーテン越しの光が逆光で様子がわかりづらかったが、持っている物はなんだか
わかった。
涼は低い威圧的な声を出した。
「置けよ」
綺樹は自分の手元に視線を落としてから、素直に金庫に戻した。
「どうしたの?」
「急にいなくなったから心配したんだ」
綺樹は涼の顔を見て、柔らかくくすりと笑った。
やっと年齢相応の笑顔に出会えた気がする。

