タクシーに押し込められ、隣に座った涼の雰囲気は、今まで感じたことの無いものだった。
いつの間に身につけたのだろう。
この、恐怖で竦みあがらせ、身動きが取れない迫力のある空気感を。
今はその時じゃないと判っているのに、動けない。
しゃべれない。
何一つ明らかになっていないのに。
なぜ涼は縒りを戻したがるのか。
急に戻ってきたのか。
どういう風にすれば今は回避できる?
どうやって逃げる?
でも。
それで解決になるのか?
ずっとただ逃げ続けることはできるのだろうか。
腕を凄い力で掴まれ、タクシーから引きずり出された。
着いたのは涼の使っている、アパートメントのようだった。
「待てよ」
ようやく出た抵抗の言葉も無視された。
ドアが開く。
駄目だ。
まだ。
綺樹は振りほどこうとした。
でも遅かった。

