涼がそのまま仰向けに寝転がって頭の後ろに腕を組んだ。
「不謹慎なのを承知で言わせてもらえば」
綺樹は目を閉じている涼の顔を見た。
「その時のフェリックスさんの立場になりたかった」
綺樹は膝を抱えて顎をのせ、演奏しているのを眺める。
「私もおまえだったら良かったのにと思うよ」
そうしたらこんなに色々なことが難しくなっていなかった。
涼も綺樹の言葉の背景を感じ取って何も言わなかった。
長く続く沈黙に、寝てしまったのかと涼の顔を見つめる。
出会った頃は、まだ少年のような顔立ちを残してさえいたのに、今は完全に大人の男の顔だった。
自分の年を考えれば当然だけど。
ふっとひっぱられる感覚に襲われる。
くちびるを重ねてみたかった。
首に腕を回して首筋に顔を埋めたかった。
その欲望に綺樹は唾を飲んで前を向いた。

