「ほら、夕暮れの中、村の教会の鐘の音だ」


最後の1小節。

長椅子から、子どもが何かを発見したように、嬉しげな声が上がる。

違う。

これは、愚かな男の最後の鼓動だ。


「フェリックス。
 私の葬式の時はこの曲にしてくれ」


どこか無邪気な声。

フェリックスは口元を歪めるようにして笑った。