泥の中に沈みこんで全身を密閉されて身動きがとれず、目を開ければ泥が入り込み、口を開ければ流れ込み、息を吸い込むことが出来ない世界だった。
あの沼から、かろうじて抜け出せた。
苦しい思いをして、長い時間がかかった。
手を差し伸ばし、沼から出るのを助けてくれたのは、フェリックスだった。
時々、彼のプライドの強さに手痛い目に遭わせられるけど。
この間の夜を思い出し、苦い微笑を上らせた。
また再び涼に突き落とされた時には、本当の沼に沈んでしまえばいいか。
あの敷地にはそのような場所がいくつもあろう。
だけどわかっている。
それをまた阻止されるだろう。
さやかとフェリックスに。
そしてまた果てしない苦しい日々だ。
死んだほうが楽なのに。
なぜ解放してくれないんだろう。
なぜ二人は放っておいてくれないんだ。
ちゃんとやるべきことは、やっているじゃないか。
なぜ余計なことをするんだ。
涼になぜ知らせるんだ。

