* 涼がなぜ現れたか、きっかけはわかった。 フェリックスの意図らしきものも。 綺樹はいつもどおり自分の執務室に出勤すると、デスクチェアに座ってぼんやり と窓の外を眺めていた。 薄い灰色の雲に覆われ、街並みはどこかしら沈んだ雰囲気を持ち、綺樹の心も晴れなかった。 会いたいな。 唐突に思った。 涼に。 そう。 未だに思うのだ。 でも、棚の上に上げた箱に入れた感情を取り出す勇気は無い。 そうしたら最後。 ずるずると沼に引きずり込まれるだろう。 一度涼によってはまり込んだことのある沼。