Storm -ただ "あなた" のもとへ-


「あーっ」


弓で綺樹を指す。

綺樹は突然の大声に固まった。

ユーリーが大笑いしている。


「わかったわかった」

「え?」

「いやはや、これはこれは」

「え?」


綺樹は目を見開いている。


「誰のピアノかわかったけれど、僕からは言えない。
 残念だけど」

「なんだか気になる物言いだね。
 でもあのCD欲しいなあ」

「だろうねえ」


ユーリーはしたり顔でうなずいた。

遠い記憶がよみがえる。

そう。

この子の母親が、自らの恋を断ち切り、日本を捨て、ここに滞在してピアノを弾いていた頃を。

そしてその傍らにフェリックスがいたことを。