「うーん。
どちらかというとドンキホーテかな」
「ドンキホーテ?」
綺樹はとても不思議そうな顔をした。
ユーリーはからからと笑った。
「冗談だよ。
グラナダの月の王子様ね」
ユーリーは凄く愉快そうだった。
まじめに取ってくれないのに、綺樹はあきらめた。
ふともう一つ聞きたいことを思い出した。
「フェリックスは昔、ピアニストと付き合ってたことがあるの?」
ユーリーがまじめな顔に戻った。
「ピアニスト?」
「彼が持っているCDを聞いたことがあるんだ。
雑音が混じっているから、私的録音だと思う。
手に入れたいんだけど売っていないみたいだし、弾き手が誰か聞いても答えないんだ」
ユーリーはしばらく考えた。
「記憶に、無いな」
首を傾げる。

