Storm -ただ "あなた" のもとへ-


   *

ドアがノックされて綺樹が入ってきた。

ユーリーは弓をおろした。


「さっきはごめん。
 寝ちゃったみたいで」

「いいや。
 お疲れだったみたいだね」

「馬に乗るなんて久しぶりだったよ」


綺樹はソファーに座って、片足を抱えこんだ。

ユーリーの婉曲的に含まれている意味には、気が付かなかった。


「聞いていてもいい?」

「どうぞ」


ユーリーは練習を再開させた。

聞いているのか聞いていないのか、わからない様子で綺樹はずっと座っていた。

ユーリーが楽譜を取り替えると、綺樹が始めて身じろぎをした。


「ピアノ曲のドビュシーの月の光」

「うん」

「聞くと、フェリックスを思い出す。
 そう思わない?」