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ドアがノックされて綺樹が入ってきた。
ユーリーは弓をおろした。
「さっきはごめん。
寝ちゃったみたいで」
「いいや。
お疲れだったみたいだね」
「馬に乗るなんて久しぶりだったよ」
綺樹はソファーに座って、片足を抱えこんだ。
ユーリーの婉曲的に含まれている意味には、気が付かなかった。
「聞いていてもいい?」
「どうぞ」
ユーリーは練習を再開させた。
聞いているのか聞いていないのか、わからない様子で綺樹はずっと座っていた。
ユーリーが楽譜を取り替えると、綺樹が始めて身じろぎをした。
「ピアノ曲のドビュシーの月の光」
「うん」
「聞くと、フェリックスを思い出す。
そう思わない?」

