「まだまだ敷地は広い。
書面の数字だけでは見えてこないものばかりだ」
「そうだな」
外の風に当たったせいか、馬に乗ったせいか、綺樹の頬は上気し、表情が明るかった。
ずっとフェリックスは“血”の存在など信じていなかった。
本流だ、傍流だ。
本家だ、分家だ。
そんなもの、何百年も経た後、遺伝子的に1代目のどのくらいの要素が残っているのか。
綺樹の母は使用人の母から生まれた子だ。
“正統な血”を言うならば、なおさら一番正当な後継者となるのかわからなかっ
た。
フェリックスは晴れやかな顔で馬をなぜ、あたりの景色を眺めている綺樹を見つめていた。
綺樹の心のガードが無くなり、無邪気に自分を出している時を始めて見た衝撃を思い出す。
その雰囲気といい、表情といい、仕草といい。
“血”とはこういうものなのかと、強烈な印象だった。
もし綺樹が生まれ時から、ウルゴイティの後継者として育っていたら、いつもそういう彼女だったのだろう。
ただガードの下に隠れていて、時折現れるから印象が強烈で、捉えられてしまうのか。
毒がスパイスなのか。
これから人生を収束に向かわせようというのに、嫌な女にはまったものだ。
フェリックスは長く細く息を吐いて空を見上げた。

