Storm -ただ "あなた" のもとへ-


「仲がいい?
 昨晩も今朝も喧嘩だぞ」


綺樹が屈託無く言うのに、ユーリーは笑いながらフェリックスを見る。


「昨晩も今朝も一緒にいたということは、仲がいい証拠だろ」

「なるほど、そういう解釈もあるんだな」


綺樹の心底感心した口調と、フェリックスがぴりりと眉をあげた様子を、ユーリーは楽しんで見ていた。


「綺樹、行くぞ」

「せっかくだユーリーに一曲弾いてもらいたい」

「後だ。
 馬に乗るぞ」

「馬。
 めんどくさいなあ」


露骨に嫌な顔をして、さっさと歩き出したフェリックスの後を追っていった。

今までまともに、ウルゴイティの敷地内を見たことが無かった。

地図とヘリから上空で見下ろしたぐらいだったので、実際に馬で走らせ、その広さと多様性に綺樹は少なからず感動した。


「これほどとは思わなかった」


綺樹はそれを隠さずに素直に現していた。

小川で馬に水を飲ませるために、フェリックスは馬から降りた。

綺樹の馬の手綱をとり、降りるのに手を貸してやる。

捕まった手のシャツの袖から、一瞬手首がのぞく。

今朝、自分が掴んだ部分が赤黒くなっているのが見えた。

自分の激情を思い出し、フェリックスは目をそらせた。

綺樹の皮膚は薄くて、すぐ痕が付く。