Storm -ただ "あなた" のもとへ-


綺樹は新聞を覗き込み土曜日なのを確認した。


「週末は必ず休むんじゃなかったのか?」

「仕事はしない。
 ユーリーが遊びに来ている。
 楽しむにはいいんじゃないか?」

「ああ、そうだな」


と言いながら綺樹は立ち上がらなかった。


「ニューヨークに戻って、仕事をするつもりだったのなら諦めろ」


どうあがいても無駄だろう。

綺樹はこっそりと、ため息をついて立ち上がった。


「あ、携帯、探してくれるんだろ?」


ドアノブを掴んだまま振り返ったフェリックスに、にっこり笑いかけた。

揺さぶりをかけられる、あどけない笑顔は今一番見たくないものだった。

フェリックスは硬い表情のまま、冷たく見下ろした。


「自分で探せ」


綺樹は小声で毒づきながら寝室に入ると、続きの衣裳部屋でフェリックスが着替えをしていた。