綺樹はフェリックスが目の前に置いたグラスに笑った。
屋敷で生活している時は、毎朝、野菜ジュースを作らせて飲んでいた。
一口だけ試したことがある。
「いつも思うが、微妙な味だよな」
一口含んで、両手でグラスを挟む。
「味を求めているわけではない」
「うん、そうだな。
薬と思えば、おいしいよな」
フェリックスは新聞を畳んだ。
「綺樹」
口調に昨日の話の続きだとわかり、綺樹の顔がこわばった。
「悪かった」
意外な始まりに綺樹はフェリックスに顔を向けた。
「おまえと結婚しないのは、他の男を愛している女をわざわざ妻にすることも無いからだ。
こちらも利害しか無いならば、とっくに妻にしている。
だから子どもを産ませない」
フェリックスの顔をみつめる。
綺樹は額に手をやった。
「なんだか・・・よくわからないな」
フェリックスは笑った。

