身を起こし、数歩先に立っている人物と目が合うと、思わず笑ってしまった。

本当にいいタイミングで現れる。

相手もにやっと笑った。


「西園寺の跡取りがその姿とは情けない」


大げさに嘆いてみせる。

何よりも西園寺を利用するのが一番の良策だ。

わかっている。

ヒモの立場を採るか。

合わない生活を採るか。

さあ、どちらにしようか。


「久しぶり成介」


涼は静かな微笑をした。

その笑みが、成介の背筋に冷たいものを走らせたのには、気付かなかった。

風が起こって、砂が小さく渦巻く。

決まりだ。

利用するものは利用する。

そして自分が好まないことは、排除してしまおう。