*
フェリックスが朝、目覚めると綺樹の姿は無かった。
ため息をついて、ベットから降りた。
昨夜は感情的なくちづけを交わしてしまった。
思わず。
綺樹に対してはあまり感情が表立つ行動はしたくなかった。
期限があるのだし、こうなった理由が理由だ。
一人分の朝食を片付け、自分の書斎に出勤する。
綺樹の書斎は隣にあり、ドア一枚で繋がっている。
開けられたドアの向こうから、物音が聞こえてくるのだから、綺樹はいるのだろう。
フェリックスは机に着くと、既に何度も読んだコンピュータの中に入っている報告書を開けた。
単に状況に溺れているわけではない。
何が起きたのか、フェリックスはすでに調べてあった。
綺樹があの日、よりによってタクシーなんかに乗った理由。
椅子の背に寄りかかった。
多分、あの馬鹿は思ったのだろう。
自分を狙うために、今度は涼を餌として使うかもしれないと。
「まったく」
小さく毒づいた。

