Storm -ただ "あなた" のもとへ-


   *

フェリックスが朝、目覚めると綺樹の姿は無かった。

ため息をついて、ベットから降りた。

昨夜は感情的なくちづけを交わしてしまった。

思わず。

綺樹に対してはあまり感情が表立つ行動はしたくなかった。

期限があるのだし、こうなった理由が理由だ。

一人分の朝食を片付け、自分の書斎に出勤する。

綺樹の書斎は隣にあり、ドア一枚で繋がっている。

開けられたドアの向こうから、物音が聞こえてくるのだから、綺樹はいるのだろう。

フェリックスは机に着くと、既に何度も読んだコンピュータの中に入っている報告書を開けた。

単に状況に溺れているわけではない。

何が起きたのか、フェリックスはすでに調べてあった。

綺樹があの日、よりによってタクシーなんかに乗った理由。

椅子の背に寄りかかった。

多分、あの馬鹿は思ったのだろう。

自分を狙うために、今度は涼を餌として使うかもしれないと。


「まったく」


小さく毒づいた。