Storm -ただ "あなた" のもとへ-


    *

ふと目が覚める。

この所、いつもそうだった。

綺樹はしばらくフェリックスの寝顔を見ていた。

日中は、後ろへ流している長めの前髪が、顔にかかっている。

フェリックスは大部分をスイスのボーディングスクールで育ち、大学だけイギリスだった。

なのに、生粋のイギリス紳士のような佇まいだ。

それがこうやって前髪が乱れて顔に落ちていると、退廃的な雰囲気を漂わせる美
青年になる。

困ってしまった。

少しずつ情が沸いてくる。

考えてみたらこれほど同じ男と寝るのは、フェリックスが初めてだ。

涼よりも。

綺樹は少し瞳をかげらせた。

結婚までしていたのに。

涼のことは全く考えないように努めていた。

押さえ込むのが上手くなった。

涼は夢の空間に置き、フェリックスは現実の空間に置いていた。

全て夢。

涼は夢だ。

そして今、一番大事なのはフェリックスだ。