Storm -ただ "あなた" のもとへ-


一緒に入るつもりの無い綺樹は、フェリックスのバスルームを使うことにした。

使用人を呼んで手伝ってもらうわけにも行かず、四苦八苦しながらシャワーを浴びて部屋に戻ると、既に出ていたフェリックスが振り返った。

綺樹をじっとただ見つめている。


「おまえのバスルームを借りた」


綺樹の声にどこからか意識が帰ってきたようだった。


「ああ、構わない」


止めていた手を動かし水をグラスに注いだ。

飲み干して疲れたように額から髪へと手を滑らせている。


「どうだった?」


綺樹は聞きながら寝室へ入っていった。

新しく敷かれたシーツの中に滑り込み、うつぶせになると気持ちよさに息を吐いた。


「なにが?」


グラスを手にしたまま、フェリックスが部屋の境目に立っている。

警戒に瞳が静かに光っている。

綺樹はそれに気がつかない振りをした。


「役員会議」


フェリックスはその言葉に瞳の光を弱まらせた。


「いつもどおりさ。
 収益報告をやって、今後の方向性の議論」


グラスをナイトテーブルに置くとフェリックスもベットに入った。

片腕で綺樹を引き寄せる。