綺樹が手を止めて顔を向ける。
しばらく見詰め合っていた。
フェリックスがため息をつく。
綺樹は書類に顔を戻した。
「気にするな。
こんなことでぎくしゃくするのは止めよう。
間が悪かったのさ。
普段なら絶対におまえはあんな提案に乗らなかった。
なんだか凄くストレスが溜まっているみたいだな。
なんなら、休暇をとったらどうだ?
ここは私が何とかしているから。
そもそも私が当主なのだし。
いつも世話になっているから、これ位はするよ」
ちらりとフェリックスを最後に見上げてモニターに体を向けた。
フェリックスはしばらく黙ってその背中を見ていた。
「綺樹。
今夜、おまえのベットに行っていいか?」
綺樹は手を止めて肩越しに振り返った。
じっと見つめてくる。
「ああ。
いいよ、待っている」
フェリックスは一つ笑みを作ってから自分の机に戻った。
下手に言葉を発するからややこしくなる。
とにかく自分中で巣食っているものを、なだめるのが先決だった。

