実の家族である綺樹の父と兄は遅れて到着した。
それで綺樹の精神はだいぶ落ち着きをみせた。
だが、兄の尚希は置いてきた恋人が気が気でないらしく、早々に帰って行った。
「いいんじゃない。
そこまで大事にするのは」
いささか毒を含んだ調子で綺樹はコメントした。
「するのが遅いけどね」
肩をすくめて言葉を足した。
詳しいことは知らないが、概略を聞いたことがあるフェリックスは黙っていた。
父親の尚也はそれよりは一日だけ長く滞在して帰って行った。
重病の患者を置いてきたとか。
離島の医者は多忙のようだ。
「私にはおまえがいるから安心なんじゃない?
あそこには父しかいないからね」
そうかもしれないが、自分の家族を考えた時、綺樹の家族関係は希薄だ。
だからなのだろうか。
綺樹がいつもどこかしら、頼りなさげな様子なのは。
疲れを覚え、少しでも楽なように身を動かし、眼を閉じた。

