Storm -ただ "あなた" のもとへ-


「誰?」


小声ながらも鋭い問いかけだった。

体を固まらせている。

フェリックスが近づくと、香りで誰だかわかったようだった。

しかし不審そうだった。

こんな時間に訪ねてくるのが、不思議なのだろう。

入ってきた人物についての疑いは、晴れていないようだった。

フェリックスは身を屈めると、軽くくちづけをした。

答えるように綺樹は少しくちびるを動かし、フェリックスの下くちびるを挟む。


「フェリックス?
 どうしたんだ?
 多分、だいぶ夜も遅いんだろう?」


フェリックスは椅子を引き寄せるとそれに座り、綺樹の肩を押さえて横にならせた。

上掛けをかけてやり、二の腕の辺りをあやすように軽く数回叩き、置いたままにする。

綺樹についている、ということが伝わったようだ。

やがて寝息を立て始めた。

甘やかしすぎだ。

全くもって。

フェリックスは口元を歪めた。

家族でも、何でもないのに。