何を綺樹が考えているのかわかっていた。
だから今まで決して綺樹にキスしようとしなかったし、抱こうともしなかった。
金を出し、他の女を抱いた。
フェリックスは考えを振り払い、傍らの椅子に座った。
持ってきたプラステイックの一つを手にとる。
綺樹のくちびるに押し当て、口の中へ少し押し込んだ。
最初、綺樹は戸惑ったようだった。
あきらかに食べ物ではないとはわかっている。
何のために口の中へ押し込んだのか。
考え込んでいる綺樹を、フェリックスは見守った。
綺樹が息を吸った。
「Aか」
フェリックスは口元で笑い、Yesの意味で綺樹の腕を一つ叩いた。
やっとこれで会話が成立しそうだ。
フェリックスは綺樹に症状を伝えるため、プラスティックを選び出した。

