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綺樹からの緊急のシグナルが本部に届き、すぐに部隊が出動していった。
フェリックスに連絡が来たのは、その後だった。
綺樹の連絡が早かったのと、部隊が出動する場所から近かったのが幸いした。
相手方は部隊が到着したのを察知すると、分が悪いのを判断し、あっさりと引き上げていった。
残されていたのは眼をつぶされ、鼓膜が破られ、両手を落とされた綺樹だけだった。
フェリックスは落ちている手を氷の箱に入れて持ち帰るように指示をした。
眼に関してもスペアがあった。
すでに綺樹がスペインの当主になった時から、あらゆるものが培養されていた。
だからフェリックスにとって一番心配な点は、精神的なダメージだった。
目も見えず、耳も聞こえないとなると、そっちのケアの方が遅れてしまう。
精神安定剤が効いて眠り込んだ綺樹を見届けて、フェリックスは部屋を出た。
目頭をつまんでからこめかみを強く押す。
頭痛がガンガンと響く。
仕事の後にあの手術は辛かった。
しかもメスを握るのは久しぶりだ。
といっても他の誰かにやらせる気は毛頭無かった。
信用できるのは自分の腕だけだ。
廊下に足音がこだまする。
角を曲がって現れたのは予想通りさやかだった。
二人はしばらく見詰め合っていた。
さやかのくちびるが微笑を作る。

