Storm -ただ "あなた" のもとへ-


相手が一瞬黙り込んだ雰囲気が伝わってきた。

ふっと香りが鼻をかすめ、くちびるが合わさった。

綺樹はそれが誰だか良くわかった。

覚えている、両方とも。

そのエゴイストの香水も、くちびるの感じも。

ずるりと体内が崩れるような感じがした。


「フェリックス」


不覚にも涙が出そうになった。

綺樹の呼びかけに答えるように、頭に手を置いた。

綺樹は二回ほど肩で息をした。


「私は。
 私はどうなってしまったのだろう?」


ちょっと皮肉っぽく聞いた。


「見えなくて、聞こえない。 
 一生このままなの?
 いや、答えてもらっても無駄だよ。
 伝えてもらう手段が無い。
 聞こえないんだから。
 見えもしない。
 全く。
 このままか?」


話す内に、出した自分の言葉に恐くなり、最後は小さく叫んでいた。