「安心して欲しいな。
そんなに痛くない」
にっこりと笑った。
「よく切れるからね」
綺樹は男の語尾が少し延びるしゃべり方に悪寒を覚えた。
まともじゃない。
顔を布で覆い、唯一のぞいている男の瞳がきらめき、身を乗り出した。
「単に痛みつけるだけじゃ面白くない」
男は視線を床に落とすと、ぶつぶつと呟いた。
「そうだ。
シェイクスピアは知っているかな?
もちろん知っているよね。
私は大好きなんだ。
彼はよく分かっている。
実に良くわかっている。
今夜はラヴィニアを踏襲しよう」
陽気なメロデイーを口ずさんだ。
綺樹は息を止めた。
彼女は強姦され、両手を落とされ、舌を落とされた。
綺樹が理解したらしいのに、薄く笑う。
「生憎だが、僕は肉体的快楽に興味は無い。
だから最初は省略しよう」
大振りな刃物が持ち上げられる。
綺樹は自分の身に実行されるのを、見ているしかなかった。

